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2009年03月06日

みんななかよし 第四話『ユーサンを尾行せよ!』(7)

みんななかよし 第四話『ユーサンを尾行せよ!』(7)

                                           文:すーさんの永遠のライバル
                                           絵:A氏


 そのころケッピ姫は柱時計の陰からユーサンの様子をうかがっていた。

 4-7.jpg

 フロアの中央には徐々に男女ペアの客人達が集まりつつある。
「ちょっと失礼します」
 ユーサンはむらがる女性たちに微笑を浮かべつつ、その輪から離れ、 大きな肖像画の下に座る女性の元へと向かった。
 二つ並んだ椅子の片方には女性、もう片方には男性が腰掛けていた。
 ユーサンはその女性に、一言二言何か話しかけて、手を差し出す。
 女性がユーサンの手をとって立ち上がると、鮮やかな薄いオレンジのドレスが大きな花のように開く。
 同時に起こるため息の数々。
 椅子に座ったまま男性の方は、苦い顔をしたまま幾度かひげをなでて、二人を見つめていた。
「わあ、踊るんだ。あの人、誰なんだろう……」
 ケッピ姫がそう呟くと、
「なんだよ。キミ知らないの? そう言えば、初めてみる顔だね……」
 後ろから声をかけられた。
 話しかけてきたのは、姫と同じぐらいの少年だった。
 栗毛はつんつん立ち、首の蝶ネクタイもまだ小さい。手にはアイスクリームのグラスを持っている。
「あの、オレンジ色のドレスの人はね、ここの家のマダムさ」
 少年はアイスクリームをぱくつきながらそう言う。
「まだむ?」
「そう、この夜会の主催者ってこと。んで、一緒に踊ってるのは、お城のユーサンっていうやつさ。夜会でユーサンを知らない人はいないよ、うちのねーちゃん達ももうメロメロさ」
 他人の口からユーサンの名前を聞くのが新鮮で、姫はにまっと笑った。
「なんだよ、何で笑ったんだよ」
「ううん。ユーサンって有名人なんだなあと思って」
「あったりまえだろー。知ってる? マダム達はユーサンと踊りたいから夜会に呼ぶんだぜ?」
「そうなの?」
「そうだよ。ユーサンは、招待したマダムとしか踊らないんだ」
「へぇぇぇ……よく知ってるね」
「だから言ったろ? うちのねーちゃん達がユーサンの追っかけなんだって。だから、あちこちに僕も連れまわされてるってわけ。そうだ、君もアイス食べる?」
「うん!」
 姫が頷くと、少年は給仕の人から、アイスクリームをもらってきて、姫に手渡した。
 アイスを食べている間にも音楽は流れ、ユーサンとそのマダムは滑らかなステップを踏んでいる。
 アイスクリームは少し苦くて不思議な味がした。
 バナナとバニラの味なのに、あと一つ食べたことない味がする。
 それでもおいしくて、その少年としばらく話をしながら食べ進めると、そのうちなんだかユーサンの足取りと女性のドレスのすそが、マーブル模様に混ざって見えた。
 頬がぽっぽと温かく、ワルツのリズムが近くで聞こえたり、遠くで聞こえたりする。
 こつん……。
 頭がついてから、ようやく姫は自分が柱時計に寄りかかっていることに気づいた。
 ボーン、ボーン、ボーン、柱時計がそう時をつける。
「今、何時なのかなぁ…」
 数えたけれど、8回以上はカウントできずに……姫の瞳は閉じていった。
                                                      つづく                                      
                   
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2009年02月27日

みんななかよし 第四話『ユーサンを尾行せよ!』(6)

みんななかよし 第四話『ユーサンを尾行せよ!』(6)

                                           文:すーさんの永遠のライバル
                                           絵:A氏

 普段のユーサンは白い執務服を着ているが、今は胸元に銀の刺繍あしらわれた黒い服を着ている。
 そしていつもは結わいている髪も、結わかれておらず、まっすぐ垂れている。
 手には紅茶のカップではなくワイングラス。
 それほどまでにいつもと違っていたが、その人物がユーサンとわかるのにそれほど時間はかからなかった。

4−6.jpg

「こんばんは、ユーサン様、まさかここでお会いできるとは思いませんでした」
「ユーサン殿、お会いできて光栄です。私、この町で貿易商を営んでいる……」
「ユーサン様、今宵の夜会、わたくしと踊っていだたけませんか?」
「ユーサン様…」
「ユーサン殿…」
 周囲には次々に女性がやってきて、あっという間に人垣が出来、その色とりどりのドレスの向こうにユーサンは見えなくなってしまった。
「いたねえー」
「いただろう?」
 二人は目を合わせてにっこり微笑んだ。
「あ! ワルツ…」
 音楽隊の音が一段と華やかになり、タキシードを着た男達がそれぞれお目当ての女性たちへと声をかけ始める。
「ユーサン、誰かと踊るのかなあ……。お城の舞踏会はあんまり踊っているの見たことないけど……」
「舞踏会の時は仕事が忙しいからな……って、おい、姫、あんまり出過ぎんなよ。見つかるぞ!」
「わかってるー!」
 そう言って、女性の中にいるユーサンを見ようと姫はリュウから少し離れ、あっという間に人の波にのまれてしまった。
「お、おい、姫!」
 駆け出そうとしたリュウの視界を、ふわりと黒い羽扇子が覆った。
「あら〜この坊やかわいいじゃな〜い?ねぇ、おねーさんたちとちょっとお話ししなーい」
「どれどれ〜? やだ!ほんと!若いわねぇ〜」
ほろ酔い気分のお姉さん達がリュウを取り囲む。
「ねえ、君いくつなの?」
「どの伯爵の弟なの?」
 大きく胸元の空いたカットドレスとスパンコール、アルコールと混ざった甘いフレグランスがリュウの鼻先をくすぐる。
「いや、あの、ボクはその………」
目のやり場に困ったリュウがしどろもどろでそう言葉を紡ぐ。
「やだー、ボクだってー。かわいい〜」
 ぐりぐり、女性の手がリュウの頭をこねくり回す。
「ちょっとー、あんまりいじっちゃ、かわいそうよー」
「いいじゃな〜い。ねぇ、ボクいくつなの〜?」
 ぐりぐりと頭を撫でられて、リュウはその手を振りほどけない。リュウはいつもの勢いがまったく感じられない程困惑していた。
「じゅ、じゅうろくです……」
「うっそー! 16? 16歳なのー」
「わっかーい、かわいいー!!」
「男の子だけど、肌だってつるつるだし、なんか、良く見ると顔もきれいよね―坊や」
 ずい、顔が近づいてきて、リュウはその場で真っ赤になる。
「いや、ボ、ボクは用事があるんで……」
 じり、と一歩下がるが、お姉さん達は離してくれそうもなかった。

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2009年02月20日

みんななかよし 第四話『ユーサンを尾行せよ!』(5)

みんななかよし 第四話『ユーサンを尾行せよ!』(5)

                                           文:すーさんの永遠のライバル
                                          
 その館の玄関の彫刻は非常に素晴らしいものだった。
 玄関だけではない。部屋の中はきらびやかな光に満ち溢れていた。
 吹き抜けの天井の真中から豪華なシャンデリアが吊り下がっている。壁面には品の良いロココ調の壁画が描かれており、ウォールランプについたクリスタルもきらめいている。家具の彫刻や、カーテンやカウチの生地も上質のものだった。
 部屋の端の方には音楽隊が呼ばれ、バイオリンやヴィオラ、チェロ、フルート、クラリネット等の楽隊が心地よい音楽を奏でている。
 ふわり、と中庭に着地したケッピ姫とリュウは、その窓から漏れるきらめきと、かすかな音楽、そして聞こえてくる談笑に耳をすませた。
「リュウくん、本当にここにユーサンがいるの?」
「ああ、間違いない。オレ、昼間見たんだ。ユーサンがこの屋敷の夜会の招待状もってんの」
「やかい?」
「ああ、大人たちが夜集まって開く宴会みたいなもんだ」
「ふうん…」
 二人は窓から夜会の様子を覗き込むが、中にいる貴族たちは話に夢中で二人には気づいていない。
「でも、大人たちばっかりだったら、私たちは入れないんじゃないの?」
「大丈夫だって」
 そう言うと姫の手を取りリュウは中腰のまま裏口へと回る。
「ここから入ればばれないし、中に入ったら適当な貴族の名前を言ってそれの付添だって言えよ」
「うん!」
 扉を開けると、きらめきと、談笑と、アルコールのにおいと、そして音楽が一気に2人を包み込んだ。
「すごいや。リュウくん、ここ、お金持ちのおうちなんだねえ…」
「そうだな。ほら見てみろよ、この彫り物…」
 リュウが椅子の背もたれのてっぺんについている彫刻を指差す。
「なあに、これ、まつぼっくり?」
「ピンポーン。貴族達の富と豊かさの象徴だぜ」
「へえ!リュウくん物知りだねえ」
「いや、この間やったドリルに……」
「わあ、みてみて、お城の舞踏会の時みたいだよ!」
 ちょっと照れて頭をかいたリュウをまるで気にせず、姫はさっさと次の言葉を紡ぎだし、ドレスに身を包んだ女性たちを指差した。
「……舞踏会ほど堅苦しくねぇよ……、さってと…ユーサンは…」
 リュウは気を取り直して、人影に隠れながら、そうあちこちを見渡した。
「あ! おい、姫、あそこ。あそこにいるのユーサンじゃね?」
 そうリュウが指差す先には
「えー、ほんとうにあの人がユーサン?」
 姫が驚くのも無理はない。壁に背を預けて立っているその姿は昼間の彼とはまるで違う姿だったのだ。

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タジー小説へ ←入っちまえばこっちのもんだ(by リュウ)
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2009年02月13日

みんななかよし 第四話『ユーサンを尾行せよ!』(4)

みんななかよし 第四話『ユーサンを尾行せよ!』(4)

                                           文:すーさんの永遠のライバル
                                          
 ケッピ姫がリュウの手を取ると、リュウはぐいっと姫を抱き寄せ、そのまま何もない空中へ一歩を踏み出した。
「な、簡単だろ」
 リュウが自慢気に微笑んだ。
「すごいや、リュウくん。ほうきがなくてもお空を飛べるんだねっ」
「だろー! 姫も、空飛べるようにしてやんよ」
 そう言うと、リュウは小さく口の中で呪文を唱えて、手を広げる。すると、その手の上に月の光が集まってくる。その光を指先につけて、リュウはチョンと姫の鼻をつついた。
 光はスゥッと姫の体の中に入っていく。
「よっしゃ。これで飛べるぜ」
「本当に?」
 姫がおそるおそる問いかける。
「ああ、もちろん。絶対大丈夫だ」
 リュウがいつもと変わらないいたずらっこのような笑顔を浮べると、姫は元気よく、
「うんっ」
 と頷いた。
 リュウがそっと、その手を放す。
「えいっ」
 まるで空気を踏んでいるかのように、姫の足は空中でとどまった。
「わあ、すごい! 浮かんでるよ、リュウくん!」
「言ったろ、大丈夫だって。さ、後れちまった。体を前に傾けるんだ。飛ぶぞ!」
 リュウが姫の手をとって飛び上がる。
「え、え、え、きゃぁぁぁ…!」
 そうして、リュウに手をつながれたまま、姫は大空に飛び出した。

 
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タジー小説へ ←お空のお散歩だぁ(by ケッピ)
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2009年02月06日

みんななかよし 第四話『ユーサンを尾行せよ!』(3)

みんななかよし 第四話『ユーサンを尾行せよ!』(3)

                                           文:すーさんの永遠のライバル
                                           絵:A氏

「い、いや、ちょっとまて! これはいくらなんでも、早すぎるっつーの……何考えてんだよ俺ぇ!!」
 ブンブン!
 顔を真っ赤にしたリュウがあわてて頭を振る。
「こう、同じドレスでももうちょっとシックに、大人らしく……」
 そう言って、もういちど指を振り直す。
 光の束がキラキラと出て、シュルルと去っていく。
「リュ、リュウくん……これはちょっと、寒いよ……」
 今度は真っ黒なスパンコールドレスだった。
 背中は大きく開いており、足元の深いスリットが歩くたびに、ふとももをちらりと見せる。
「ぶほっ! ……なんでこうなっちまうんだよっ! 殺されたいのか、オレ」
 顔を真っ赤にしながら、目のやり場に困ったリュウがそのまま指をふるう。

 4−3.jpg

「いつものだ、いつもの……。出て来い!」
 キラキラ………。
「わあ、かわいい〜。黄緑色。どうリュウくん、似合う?」
 今度は薄い黄緑のシフォンドレスになった。
 春の花を耳元にあしらい、夜に出かけるにはぴったりの格好だった。
「よし、こうでなきゃな。っていうか、今までのは一体何だったんだ? もしや、俺の隠れた願望? いやいやいや……いくら俺でもそこまでは……」
 リュウが一人でブツブツ言っているのをケッピ姫が心配そうな顔で眺めていた。
「じゃあ、オレもっと」
 自分に向って指を振ると、いつものボレロが瞬く間に、黒いタキシードに変わる。
 髪もオールバックにセットされている。もちろん胸のポケットにはピシッとアイロンのかかった白いハンカチが入っていた。
「さ、行こうぜ、姫」
 リュウが手を差し出すと姫はくすくす笑いながら桜貝色の爪先を差し出す。
「何がおかしいんだよ」
「だって、リュウくん……うふふ、うふふふ……ちょっと似合わないよ」
 初めてみたリュウのタキシード姿が面白かったのか、姫は笑いが止まらなかった。
「うるへーよ」
 くるり。
 リュウは少しだけすねて後ろを向いた。
 そして、姫は王冠を外して、いつもの位置に置く。
 ベランダに出て、音をさせないように窓を閉め、そこで姫がふと気づく。
「あれ? リュウくんほうきは?」
「そのドレスじゃほうきには乗れないからな、置いてきたんだ」
「ええ、じゃあどうやってお空飛ぶの?」
「簡単だよ。ほら……」
 そう言って、リュウはベランダのてすりの上に立ちあがり、姫に手を差し伸べた。
 
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タジー小説へ ←ま、まぁこんなもんだろ(by リュウ)
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2009年01月30日

みんななかよし 第四話 『ユーサンを尾行せよ!』(2)

みんななかよし 第四話『ユーサンを尾行せよ!』(2)

                                           文:すーさんの永遠のライバル
                                
「おやすみなさいませ、姫様、良い夢を」
 ランプの明かりを絞って、ハヤシサワがそっと部屋を出ていく。
 ベットサイドのバラの時計は、もうすぐ9時。満月が、天蓋ごしに柔らかい光を届けていた。
 ベットの中で横を向いたケッピ姫は、その金色の秒針が動く様子をじっと見つめている。
「54、55、56、57、58、59……」
 ぱたん!
 姫が60のカウントをしたのと同時に窓が開いた。
 そして、窓の外から、背中に月光を受けたリュウが、ひょいっといつものように入ってくる。
 姫はすぐにベッドから飛び降り、リュウに駆け寄った。
「リュウくん!」
「しーっ、昼間じゃねぇんだって。静かに静かに」
 リュウは姫の口元に指をあててこつんとその頭をたたく。
「さ、急いで追うぞ、今、丁度ユーサンが門をくぐったとこだ」
「うん」
 はだしでぺたぺたと歩き始める姫を見て、リュウはぴたっと立ち止まる。
「ちょっと待った」
「なあに?」
「さすがにパジャマじゃあれだろ? ちょっと着替えてから行こうぜ」
「えええ、お着替え? 今から? お時間かかっちゃうよー」
 慌てたような、困ったような姫の顔に、ぴっぴとリュウが指を振る。
「大丈夫だよ。姫、これでやっちゃえば」
「これ?」
「そう、これ」
 リュウの指先で、淡い光がその役目を今か今かと待っているかのように点滅している。
「ユーサンが行く場所の目星は付いてんだ、そこに行くような、格好ってと……。あれだな、きらびやかなドレス……」
 ぼそぼそと頭の中で考えてから、
 ひょい!
 リュウが指を振ると。
 キラキラキラキラ……。
 まばゆい光がパジャマを着た姫を包み込み、首元からリボンを巻きとるかのように消えていく。
「わああ、すごい! お嫁さんだー」
 そして、純白のウェディングドレスに身を包んだ姫が現れた。
 頭のヴェールが長くじゅうたんの上に落ちる。
 いつの間にか手にはブーケまで持っていた。


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タジー小説へ ← わぁ、お嫁さんだぁ。(by ケッピ)
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2009年01月23日

みんななかよし 第四話 『ユーサンを尾行せよ!』(1)

みんななかよし 第四話 『ユーサンを尾行せよ!』(1)

                                           文:すーさんの永遠のライバル
                                

 お城の大広間の大きな時計が8つの鐘を打つ。
 時刻は夜八時。
 月が差し込む大広間で、ケッピ姫がきょろきょろと誰かを探していた。
 窓の外、机の下、柱の時計の中、花瓶の花を外して中のぞき、ソファーのクッションの下を見る。
「おかしいなあ、いつもいるはずなのに…」
 カーテンの裏をのぞきながらそう口を尖らせた。こうなったら多少ハヤシサワに怒られても、もう呼ぶしかない。そう思った姫は思い切ってその名を口にした。
「……リューくーん!」
「あんだよ」
「うわ、びっくりした。やっぱり花瓶の中に……!」
「んなわけねーだろ。今丁度そこから入ってきたんだって」
 ぺち、とリュウが姫の額を軽く叩く。
「よかった。リュウくんがまだお城にいてくれて」
 姫がにっこりと微笑んで返事をする。
「今日さ、金曜日の夜でしょ。リュウくん、今晩……時間、ある?」
 何か企んでいるような、いたずらめいた青い瞳がリュウを見上げた。
「えっ!? な、なななな、なに言ってんだよ。今晩って、よ、夜だぞ? お子様は寝る時間なんだぞ、これからは大人の時間っていうか、その、だから……えっと……」
「今日の夜はね、どうしても、私、リュウくんと一緒にいたいの!」
 赤面してしどろもどろになっているリュウに、ぱちぱちといつもの目を瞬かせた姫が言う。
「い、一緒!? ま、まぁ、お…オレは別にいいけどよ。ゲホンゲホン!……んじゃ、今夜はずっと一緒にいてやんよ」
 ひっくり返った声を、咳で隠しながら、リュウは赤い顔のまま鼻をぽりぽりと掻いた。
「本当? よかったあ! じゃあ、これで二人でユーサンの後をついていけるね!」
「は?」
 リュウが間の抜けた声をあげる。
「だってさー、ユーサンいつも金曜日の夜になると、おめかししてどこか出かけるんだよ。それで土曜日の朝に帰ってくるの。リュウくん、どこいってるのか知りたくなあい?」
 ぱちぱちと瞬く姫の顔はいつもと変わらずそこにある。
「なんだー、そういうことかよ………」
 どこか残念そうに呟いてリュウが顔を上げた。
「確かに、ユーサンの行動はいつも不可解だし、プライベートは謎だらけだな」
「でしょでしょ? だからね、ユーサンの後をついていってみようよ!」
 そう言って姫がはしゃいでいると、向こうの部屋からハヤシサワの足音が聞こえてきた。
「姫様、ケッピ姫様―。そろそろ寝間着に着換える時間でございますぞー。今日は聖なる書の第6節を…このハヤシサワが朗読いたします。お部屋にお戻りくださいませー。どこに行かれましたか、姫様! 姫様!」
「じゃあ、リュウくん。夜の九時に、お窓のところで!」
 姫がくるんとカールを弾ませて後ろを向く。
「わかった……ほら…行け!」
 バタン、と広間の扉が閉まる。
 外は満月、見上げたリュウの瞳も、金色に光っていた。


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タジー小説へ ← あ〜、びっくりした。(by リュウ)
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2009年01月16日

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(15)

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(15)

                                           文:すーさんの永遠のライバル
                                           絵:A氏


 夜9時。
 ケッピ姫は拾った桜を押し花にするために本に挟んで枕の下に入れてから布団にもぐった。
 そして、姫の部屋の隣のバルコニーでは、ハヤシサワ、ユーサン、リュウの三人が星を見ながら今日の出来事を思い返していた。
「……あの姿、確かにミネ婆じゃった……。あやつめ、花見の席にまで店を出しおって…」
 ぶつぶつと文句を言うハヤシサワの隣で、
「いかがでしたか? リュウくん」
 ユーサンがリュウに話しかける。
「バッチリよ。ふんじばって、牢屋にぶち込んできたぜ。あの不動産屋、すげー悪徳でやんの。ああやって偽の権利書を山ほど作って売ってたらしいぜ」
「お店はどうしました?」
「偽の権利書ごと燃やしてきた」
 そう言って、火トカゲのポチを差し出すと、ポチがげふっと口から黒い煙を吐き出した。
「そうそう、これ、不動産屋があの爺さんから巻きあげた金貨100枚なんだけど、どうする、届けに行くか?」
 リュウが革袋に入ったそれをジャラジャラと片手で振った。
「ならば、それは明日ワシが届けるとしよう。それから、あのご老人にはぽっこり山の管理人としての職を授ける予定じゃ。良いな」
「いーんじゃねーの、適材適所で」
「……リュウとは大違いじゃ」
 ハヤシサワがぎろりとリュウをにらみつけるが、リュウは素知らぬ顔で夜空を見上げた。
「それにしても、簡単に国の文書が偽造されてしまうのは、困りますね。ハヤシサワ殿、明日すぐにでも文書の改訂をいたしましょう」
「そうじゃな」
「それ、オレには関係ないことだよな。な、な? んじゃ、オレは明日は姫と…」
 うきうきとほうきの上で、明日の予定を考えるリュウに、
「姫様には明日こそ、勉強をしていただくのじゃ! リュウ! 姫様を外に連れ出すことはこのハヤシサワが……」
 ハヤシサワがかみついた。
「わかった、わーったって。…と、あ…それ、ユーサン、その封筒…まさか…」
 ユーサンが手にひらひらと持っている封筒を見て、リュウが眉をひそめた。
「この水色……見覚えがある……これってスー王子の……」
嫌そうにリュウがつぶやくと、ハヤシサワがすばやくその手紙をひったくった。
「なに? フルフル国のスー王子とな! 姫様宛へのお手紙…。特定の殿方からの手紙など、姫様にはまだ早い! このハヤシサワが来たるべき日が来るまで手元に保管しておきましょうぞ…と。二人とも、失礼! 特にリュウ、明日の朝は遅刻するでないぞ!」
 いそいそとその手紙をしまい、部屋に戻っていくハヤシサワの背中を見送りながら、ユーサンは黙ってにこやかに笑い、リュウは、ケッと毒づきながらちょっとほっとしたような顔をした。
「安心しましたか?」
「な、なにってんだよ。そんなんじゃねーよっ!」

 3-15.jpg

 若干頬を赤く染めながら、リュウはぴゅーっとほうきを空へと走らせる。
 ふたりが去り、後にはユーサンが残った。
 そのユーサンも黙って紅茶を飲み干すと、白い執務服の裾を春風に揺らし、バルコニーのドアを閉めた。

                                                       第3話おわり                                                         
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タジー小説へ ←四話に続くよ(by ケッピ)
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2009年01月09日

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(14)

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(14)

                                           文:すーさんの永遠のライバル
                                           絵:A氏

 そして夕暮れ。
 賑わいは去り、帰る人々の背中と桜が太陽に照らされ、橙色に染まる。
「ふぃー、つかれたなー」
「でも、リュウくん。ほら、ゴミが一個も落ちてないよ」
 ケッピ姫がずれた王冠を片手で直しながら、満足そうな顔で言う。
「姫様! このハヤシサワ、姫様のお優しいお心に感動いたしました!」
 まだ泣いているハヤシサワが姫の手を握ってぶんぶんとふった。
「ところで、姫様。姫様はお花見するお時間はありましたか?」
 ユーサンがのんびりとした口調で声をかける。
「ん、と……袋配るのに一生懸命だったから、あんまり見てないなあ……」
 呟くと同時に姫のお腹がぐぅぅぅぅと鳴った。
「そう言えば、お昼御飯もまだだったね、おなかすいちゃった」
 ペロッと舌を出して笑う。
「そうでしたな、申し訳ございません。このハヤシサワ、食事のことをまったく忘れておりました!」
「んじゃーさー。夜桜見物やっちまわね?」
 リュウがくいくいと空を指差すと、そこにはまだ白い月が昇っていた。
「お月さまと桜を見るんだ、それも素敵だよね!」
 姫がお願いするようにつつつっとハヤシサワへ視線を投げる。
「……仕方ありませんな、本来ならば夕暮れとともに城に戻る予定ではありましたが……。桜を見て夕餉を食したらすぐに帰るということでしたら、良いことにいたしましょう」
「やったー! ありがとう、ハヤシー! 大好き!」
「いや、あの、その。ひ、姫様そのような、大事なお言葉は、気持ちを決めた殿方に使われるもので…」
 手を取ってぶんぶんふる姫に、ハヤシサワは照れたような表情でしどろもどろになってしまう。
「んじゃ、どこで見るかねえ……」
 リュウ、そして姫があたりを見渡す。
「あれ? あそこにいるの……」
 姫が何かを見つけたようで走り出した。
「いたー! パーンパーン大―佐―!」
 そこには、木の下で、頭に花びらをいっぱい乗せたパンパン大佐がたたずんでいた。
 姫は勢いよく走り出し、ぴょ〜んとパンパン大佐に抱きついた。
 そして、そのまま、真後ろにひっくり返る。
 ふわふわふわっと、桜の細かい花弁が舞い上がる。
「パンパン大佐、来てくれたんだ。おなかふわふわ、おひさまのにおいだね」
 すりすりと姫がパンパン大佐に頬ずりする。すると、上からひらひらと舞った花びらが落ちてきた。

  3-14.jpg

「おや、パンパン大佐。ご苦労様です」
 そうハヤシサワが声をかけ
「場所取りしてくれてたのかよ?」
 と驚いた顔でリュウが言う。
「……ここからだと、お城が一望できますね……」
 ユーサン何気なく景色を眺めながら言った。
「わあい! ありがとうパンパン大佐!」
 もういちどふかふかのおなかに頬を寄せて、姫がにっこり笑う。
 それをみていたパンパン大佐の頬が赤く染ま……。
「パンパン大佐! 業務報告させていただきます! こちらへ!」
 染まらないうちに、かご付き椅子に座らされて、兵隊達に連れていかれてしまった。

 夜のお花見はまた格別だった。
 ハヤシサワの作るお弁当はどれも覚めても絶品だったし、パンパン大佐が持ってきてくれた暖かいスープも疲れを取るのに最適だった。
 リュウは魔法で桜の花の色を七色に変えて姫を喜ばせ、桜を前に気をよくしたハヤシサワもゆっくりと地酒のさかずきを傾ける。
 ユーサンは誰からもらったのか、ワイングラスに口をつけ、横にあるチーズをつまんでいた。

 あっという間のお花見、その帰り道。
 姫は誰かに呼ばれた気がして、ふっと後ろを振り返った。
 桜の木の下、背の小さいおばあさんがこちらに向かって手を振っている。
「おい、何見てんだよ。行くぞ、姫」
「え…あ、うん!」
 リュウに呼ばれてから再度振り返るとそこにおばあさんの姿はなかった。
 きっと、おばあさんが「ありがとう」って言ってくれたんだ。
 不思議そうな顔をするリュウの横で、姫は幸せな気分になった。
 良かった、お約束は果たせたんだ、と。

                                                         つづく                                                         
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2009年01月02日

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(13)

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(13)

                                           文:すーさんの永遠のライバル
                                
「あ、ヘッド!」
 ケッピ姫が大声をあげて手を振った。その視線の先にいたのは、爆走うさぎ集団『ハイスピード=ラビッツ』の総長だった。
 総長は大きく手をふる姫に目をむけ、投げキッスをひとつ。
 それから、動物たちが山に戻り、飛び跳ねる様を腰に手を当てて眺めていた。
 そして、その後も住民たちが続々と山を登ってくる。
「町の住民たちも、春を楽しみに来たようですな……」
 うむうむとハヤシサワが満足気に頷く。
 その脇で、姫があわててリュウのそでを引っ張った。
「あ、リュウくん、ふくろふくろ…!」
「任せとけって」
 リュウがひょい、と指を一振りすると、空中にたくさんのビニール袋が現れた。
 もういちど指を振ると、今度は目立つ立て看板が出てくる。
『来年も 来たけりゃゴミは 持ちかえれ』
『捨てる手を 逆さにすれば 拾う手に』
『ノーモアポイ、ノーモアティアーズ』
『桜折るバカ 梅折らぬバカ 折った桜は戻らない』
 いくつか出てきたそれを、リュウは次々に見える位置へ立てていく。
「ゴミはお持ち帰りくださーい」
「置いてったら、しょーちしねーぞー!」
 姫とリュウが桜を見に来た住民達にそう言って、一人一人ゴミ袋を配る。
「ああ、率先して慈善活動とはなんと素晴らしい! 姫様、ご立派におなりになられて……。このハヤシサワ、こんなに嬉しいことはありません」
 ハヤシサワはそんな姫の姿を見ながら、涙を流し鼻水をチーンと拭いた。
 そのゴミを捨てようと思ったその手で、ゴミ袋へ。山のようにつめていく。
「キャッ…! ユーサン様、まさかこんな所でお会い出来るとは思いませんでした。」
「私もです! 桜とユーサン様、とってもお似合いです」
 呼びもしないのに、ユーサンの周りには黒山の人だかり、皆女性ばかりだ。
 ユーサンはそんな女性達に、にこにこと笑顔で袋を配ってゆく。
「これも公務ですから。皆さんが手伝ってくれるととても助かりますよ」
 そう言って袋を渡す。女性たちの目の中には桜よりもユーサンしか映っていない。
「私、配りますわ!ユーサン様、お手伝いさせて下さい」
「わたくしも!」
「あたしも!」
 ユーサンの前にすぐさま無数の手が出てくる。
「ありがとうございます、キャロルさん。ああ、クリスティーヌさん、もしよろしければこの袋の束を、あちらにいらっしゃるケッピ姫様に渡してはいただけませんか……。おやコニーさん、頭に、ほら……花びらが……」
 キャーキャーと騒ぐ女性たち。
 あっという間にぽっこり山はいつものにぎわいを取り戻した。
 ティーポットカフェのオープンサンドに、向こう側ではシブいマスターがワインやビールをふるまっている。
HRの腕章をつけたウサギたちも徐々にはしゃぎだし、歌ったり、騒いだり大賑わいだ。
 それから、動物たちの大運動会も始まった。
 誰もがその手にゴミ袋を持っている。
 落ちているごみは一つもない。
 折られた桜も一枝もない。
 大きな名物の桜の木の下、姫達、城の者がこまごまと働く様子を見ているのは、きこりの老人だった。
 老人はそっと満開の桜を見上げた。
「婆さんや、……これでよかったんじゃ、な」
 口元がやっと微笑む。
 その手の上に、ひらひらと手をつなぐように一枚の花びらが舞い落ちた。


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2008年12月26日

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(12)

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(12)

                                           文:すーさんの永遠のライバル
                                           絵:A氏


「お爺さん! お爺さんは本当は優しい人だケル!」
 マイケルはぴょ〜んと老人の前へ飛び出した。
「お爺さんは、本当はおいらたちを守ろうとしてくれただケルね。ありがとうだケル! そんなおじいさんの気持ちを、おいらたちは全然知らなかったケル。意地悪だなんていってごめんなさいだケル!」
 マイケルが頭を下げると、ふるふるふるっとその柔らかい針が、床を撫でつける。
 老人はマイケルを上から眺めたまま何も言えずにいた。
 その様子を見たケッピ姫は、静かにマイケルの小さな前足とグローブみたいな老人の手をつなぎ合わせて。
「な・か・よ・し」
 2人の手を上から4回、ぽん、ぽん、ぽん、ぽんと叩いた。
 見つめ合う老人とマイケル。老人はにこりともしない。
 次の瞬間、マイケルの上に老人の大きな手が勢いよく振り下ろされる。
 ドキッとする姫。
しかし、マイケルに触る直前、その動きは止まり、そおっと、老人の手がマイケルをなでた。
「許してくれるのか? 地下に閉じ込めたこのわしを……」
「もちろんだケル!」
 老人の手のひらにマイケルは鼻を押し付ける。
「ありがとう…、ありがとう…」
 マイケルの鼻の上に大粒の涙がぽたぽたと落ちた。
 ピピ、飛んできた鳥が桜の枝にとまる。
 それを見て、ユーサンが姫の肩をトントンと無言でたたいた。
「ん?」
 振り返り、ユーサンの指の先を見ると。
「あ! 桜!」
 ぽっと小鳥の足元に桜が咲く、1つ、2つ…。
 つぼみだった桜がふわり、ふわりと見る間に咲いていく。
 木に咲く薄ピンク色の花たち。
 姫と老人の目の前で、今、一斉に春が芽吹いた。
 そよぐ風は柔らかく、花の甘い香りを含ませる。そしてゆらゆら落ちる日光が、桜の色を反射して明るく照らしつける。見上げればとびっきりの青空。
「あ、みんな…出てきたケル!」
 桜の開花につられて、動物たちが戻ってきた。
 マイケルはすぐさま走りより、皆と一緒に喜ぶ。
 動物達の中に学ランのそでにHRと刺繍の入った腕章をつけているウサギの背中が見え隠れしていた。

 3−12.jpg

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2008年12月19日

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(11)

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(11)

                                           文:すーさんの永遠のライバル
                                           絵:A氏


「ねえ、おじいさん。どうしてそんなにこのお山が欲しかったの?」
 ケッピ姫が老人の顔を覗き込む。
 すると、すっかり怒る気力を無くした老人がぽつぽつと答えた。
「…別に、山が欲しかったわけじゃあない。わしは、ただ婆さんとの約束を守ろうとしただけじゃ」
「おばあさんの?」
「そう……わしと婆さんの約束じゃ」
 老人はその逆三角形の目を、懐かしいものを見るように細め、話し始めた。
「もともとわしらはこの城下町のきこりの夫婦じゃ。毎年、ここで花見をするのがわしと婆さんの楽しみじゃった。しかしな、いつの間にか山は変わってしまった。花見に来た観光客たちは、食べた物のゴミや缶を投げ捨てていくし、桜がきれいだからと言って枝を折って持って帰る。……山は汚れて、動物たちもいなくなってしまったんじゃ」
 偽物の権利書をゆっくりと巻きとりながら老人が言う。
「んだから、わしと婆さんはきれいな山で花見が出来るよう、二人きりでゴミ拾いを始めたんじゃ」
「こんなに広いお山を、おじいさんとおばあさんの二人きりで?」
 姫の驚いた声に老人は静かに頷いた。
「わしらは、雨の日も風の日もゴミを拾った。みるみる山はきれいになったよ。いなくなった動物たちも戻ってきて、一安心と思っていた時じゃ。……ゴミ拾いの最中に、婆さんが、狩人の鉄砲に撃たれて、死んじまったんじゃ」
 どん!
 床を叩く老人、ほこりが舞い上がった。
「……婆さんは最後に言ったんじゃ、もう一度きれいな桜が見たかった…ってな」
 静かな、それでいて重たい空気が流れた。
「だから、わしは婆さんとの約束を守ろうとしたんじゃ。初めはこの山を荒らすやつらだけを入れないつもりだった。山を見張って観光客を追い返してたんじゃ。でもな、悪い奴らは、わしがいない夜を見計らっては、山に忍び入り、あろうことかこの名所の桜を切っていこうとしたんじゃ。だからわしは今までためた全部のお金を払って、この山を買って、そして封鎖した……」
「ご老人、このハヤシサワ、心中の傷心お察しいたしますぞ……」
 ハヤシサワがしゃがんで老人と目を合わせる。

 3-11.gif

「でも、爺さん、動物たちを地下に閉じ込めたのはなんでだよ?」
「動物たちが表に出れば、また狩人が来て木を切り進め、荒らして去っていく。……それに、動物たちも無駄に撃たれるのは、その…なんだ、…かわいそうじゃろう……。鉄砲の弾は固くて痛い。婆さんも……痛がっておった」
「おじいさん……」
「…権利書はニセモノ、お金も全部使ってしまったし、街の皆からも嫌われてしまった。……もう、わしも疲れた。早く桜が咲いて婆さんとの約束が果たせれば、こんなことはしないのに…」
「じゃあね、おじいさん。私達が、みんなにゴミは持ち帰るように、桜の木を折らないように、動物さんたちを無駄にとらないように言うよ。…マナーを守るようにみんなに呼びかけるよ。それなら、おじいさんも安心できるよね?」
 姫が老人のそばに同じようにしゃがんでそう声をかける。
「本当か? 約束してくれるか?」
 真剣な老人の視線を姫がまっすぐ見つめかえす。
 その首が縦にしっかりと頷いた。
「約束するよ。おじいさんとおばあさんのお約束が、必ず果たせるように」
「この国の姫様がそう言ってくれるならありがたい。それなら今すぐこの山を解禁するとも。わしだって、早く桜が見たいんじゃ……」
そう老人が言った瞬間、胸の中からマイケルがポーンと飛び出してきた。

                                                         つづく                                                         
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タジー小説へ ←心中お察し致します(by ハヤシサワ)
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2008年12月12日

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(10)

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(10)

                                           文:すーさんの永遠のライバル
                                           絵:A氏

「姫!!」
「無礼者が!! 姫様に銃口を向けるとは何たる狼藉……」
 リュウとハヤシサワがさっと姫の前に立つ。
「姫だったら尚更のこと、このわしに山を譲っておいて、今更、動物たちへ解放しろとは、そんなこと契約には書いていなかったはずじゃ!」
 カチ。
 と引き金に指をあて片眼をつむる。
 リュウの指先がいつでも魔法が放てるように輝き始め、多くの兵隊たちが、後ろでスラリと剣を抜いた。
 場に、緊張した空気が張り詰める。
 その後ろから静かに声が響いた。
「失礼ですが、ご老人殿。この山の権利書はどこで発行したものでしょうか?」
 表情は穏やかだが有無を言わせぬ口調のユーサンが老人に声をかけたのだ。
「町の不動産屋だ!」
「その権利書見せてはいただけないでしょうか?」
「見たら帰るのか! …その前に誰だお前は!」
「城に勤めるユーサンと申します。その権利所が本物であれば、すぐにでも帰りますよ」
 ユーサンは穏やかな声で言い、柔らかな表情を崩さない。
 しかたなく老人はめんどくさそうに、のっしのっしと奥に入っていった。
 拳銃が自分の目の前から降り姫がほっと胸を撫で下ろす。
「び、びっくりしたあ……」
「この山はもともと王国の持ちものです。それを譲り受けたとするならば、僕達が知らないわけはありません。僕はこの山が他者の手に渡ったとは知りませんでしたが、ハヤシサワ殿は?」
「全く知らん。土地の取引などここ何年しとらんはずじゃ。ふむ、と…なれば誰かが王国の名を語って不正な取引をしたとしか考えらん!!」
 むぅ、とハヤシサワが銀色の眉を寄せる。
「ねえ、ねえユーサン動物さんたちは?」
「大丈夫ですよ。姫様。安全な場所に避難していただいています。ちゃんと護衛も付けましたしね」    
「ありがとう」
「どういたしまして」
 こそこそと小さく、そう声をかわす3人の前に、長い巻きもの状の権利所を持って老人が戻ってくる。
「これじゃ、見たらさっさと帰れ!」
 さぁっと地面の上に広がる巻きもの状の権利書。
 そこには……。
『ぽっこり山の権利を 金貨100枚で すべてあなたにゆずります。
                  
                      ふわふわ国 大臣ハヤツサワ                   
                             執務官 ユーサソ』
 と書いてあり、それぞれの署名の脇には国の印鑑らしきものが押してあった。
「あれ?」
 姫が首をかしげる。

 みんなか3-10.jpg

「これ、ハヤシの名前間違ってるよ? それに、ユーサンのも」
 姫が指をさして指摘する。
「ほら、ハヤシじゃなくて、ハヤツになってるし、ユーサン、じゃなくってユーサソになってる…」
「こっちの印鑑だって、怪しいもんだぜ。国印ってこんなんだったか?」
 リュウが胡散臭そうに印鑑を指差した。
「なあ、じーさん、あんた騙されたんじゃねーの?」
「そんなわけはないはずじゃ!」
広がったそれを拾い上げて覗き込む老人の怒りで赤かった顔色がみるみる青くなっていく。
「こ、このわしがだまされたというのか………」
 老人はがっくりとうなだれた。

                                                         つづく                                                         
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タジー小説へ 間違いに気づいてもらえたようですね←(by ユーサン)
posted by (有)すークリエーション at 17:12| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | みんななかよし(小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月05日

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(9)

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(9)

                                           文:すーさんの永遠のライバル


 名物の桜の木の横に、大きな丸太で構築された頑丈そうな山小屋があった。
 桜の花はここも咲いていない。
「こ、こ、こ、ここだケル。」
 にわとりのような声を出しながらマイケルは姫の胸元に潜り込んだ。
 姫はごっくん、とつばを飲み込み、大きなドアをこんこんと叩く。
「こ、こんにちは。どなたかいませんか?」
 もう一度、こんこんと叩く。
 しかし、中から返事はない。
「だれもいないのかなあ」
 姫が小さな首をかしげる。
「誰だ! 今度は誰が入りよった!」
 怒鳴り声と共に、どしどしとあるく音がしたと思った次の瞬間、
 ばん!
 ドアが開いた。
 中から出てきたのは、体格がよく野性的な老人だった。
 春先なのにタンクトップで、その肩も腕も足も筋肉がむきむきとついている。頭ははげているものの、逆三角形にとがった目と、その口元からはみ出た歯が、牙のように見えた。
 思わず、ひるむ姫。
「あ、あの、あの……おじいさん。ちょっと私、お話がしたくて来たんだけれど……」
「わしには話すことなどない! 帰ってくれ!!」
 老人は小さな姫にも容赦なくどなりつける。
「で、でも……動物さんたちがお日さまの下でお花見とか、運動会とかしたいって言っているんです」
 姫は勇気を振り絞ってそう言い切った。
「動物? ……冗談じゃない! ここはワシの山じゃ。ワシの山なんだからワシ以外のやつは足を踏み入れてはならん! お前たちもじゃ、帰れ!帰れ!!」
 しっしと追い払うようなしぐさをされてしまうと、もうどうしていいのかわからず、姫は困り顔でハヤシサワを見上げた。
「姫様に向かってお前とはご老人、言葉が過ぎますぞ!」
「なんじゃと? 姫様? ……ふ、ふん! 誰でも一緒じゃわい。わしの山に足を入れることは許さん! それが姫様であっても動物でっても、鳥であってもじゃ!」
 いぶかしげに姫を上から下まで眺めて、老人はもう一度しっしと手をふった。
「爺さんがさー、あいつらを地上で騒がせてやんねーからさ、ここの桜だって開花が遅れてんだぜ? 知ってんのか? どこの桜も皆咲いてて、今咲いてねーのここだけだぞ」
 しょげそうな姫の頭をポンと触りながら今度はリュウが口をはさむ。
「何をばかなことを! ……ははぁん、さては小僧、お前もわしの山の桜が欲しくなって盗みに入った口か? そうはさせんぞ!」
 そういうと、老人はどしどしと一度部屋の奥へ戻っていった。
「リュウくんは、そんなこと思ってないよ…」
 姫が両手を振って否定した矢先。
 戻ってきた老人は猟銃を取り出し、あろうことか姫達へと銃口を向けた。
                               
          
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タジー小説へ こ、怖いケル。ブルブルブル←(byマイケル)
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2008年11月28日

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(8)

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(8)

                                           文:すーさんの永遠のライバル
                                           絵:A氏

「そうだケル。あのおじいさんがおいらたちを下に追いやったケル。だから、下で運動会をしていたら、桜も、下に咲いてくれたんだケル。やっぱり、花は賑やかな所に咲くケル!」
 リュウの手の上に乗ったまま、桜の花を眺めてマイケルがキーキー鳴いた。
「なんと! 花が根から咲いているのは、地下の方がにぎやかで楽しそうだからですと……。風流なことでございますな」
「桜のお花も、動物さんたちに見てほしかったんじゃなあい?」
 姫がハヤシサワとにっこり視線を合わせる。
 それから、きれいだなあと見上げていると、根っこに生えた桜から良い香りが漂ってきた。
「桜は確かにきれいですが、その意地悪なご老人というのが気になりますね」
 聞きなれた声に、はっと振り返るとリュウの隣に白い執務服のユーサンの姿があった。
「うへっ……、いつの間に?」
「あ、ユーサン! 私達がここにいるのよくわかったねえ!」
 リュウと姫がそれぞれ声を上げる。
「ええ、先ほどお城に戻ったら、侍女のカレンさんが教えてくれました」
 姫の頭をゆっくりとなでながらユーサンがにっこり笑って言う。
「マイケル君。その意地悪なご老人は今はどこに?」
「この上だケル。山に小屋を建ててそこに住んでいるんだケル」
 マイケルが鼻で地上をさすと、その鼻先に日の光があたった。
 「本当は、青いお空の下で、思いっきり運動会も、お花見もしたいんだケル。桜の花だってきっと太陽を浴びたいと思ってるんだケル!」
 リュウの上でまた、マイケルがキーと鳴く。
 青空を向いて、太陽を向いて、キーキー、キーキーと。

 3-8.jpg

 その小さな声に反応したのか、さっきまでワーキャーと騒いでいた動物たちが、皆空のあるはずの方を見上げて、それぞれに鳴き始めた。
 ワォーンと犬とオオカミの遠吠えがさびしげに洞窟内に響き渡る。恋しいのは日の光りだった。
「じゃあ、私がそのおじいさんにお願いしてくるよ。マイケル君たちが困っているから、上でお花見も、運動会もさせて下さいって……」
 姫がそう提案すると、リュウとハヤシサワが驚いて目を丸くした。
 けれど、ユーサンは表情を崩すことなくいつもの笑みを浮かべている。
「でも、お姫様。お姫様一人じゃ危ないケル。おじいさんはものすごーく怖くて頑固だケル。それに、あまり怒らすと奥から鉄砲を持ってくるんだケル」
 ぷるるっと、鉄砲の穴思い出して身震いした。柔らかい針がさらさらとリュウの手のひらを撫でる。
「うふふふ、平気だよ。今日はねえ、私一人じゃないもの……」
 姫は、心配いらないよとマイケルの鼻先をつついた。
 そして自分の後ろに立つ、その3人を見て言う。
「ね、リュウくん、ハヤシ、ユーサン、お手伝いしてくれるよね?」
 振り返った姫の視線を受けた3人。
 ふっと一番初めに笑ったのはリュウだった。
「オレが手伝わないなんて言ったことがあるかよ。……ほら、行こうぜ」
 姫の手を普段通りに取るリュウ。その手をパンと払いのけて。
「姫様お一人などととんでもないっ! このハヤシサワが剣となり、盾となり姫をお守りいたしますぞ! 昔は黒ひげ剣の使い手と称されたこのハヤシサワ……」
 ずずずっとハヤシサワが前に出る。
「うぷぷぷ……なんだよ、爺さん、黒ひげ剣って! 白ひげ剣の間違えじゃねーの。ってことはその自慢の頭も銀髪じゃなくって、やっぱ白髪?」
「うるさい! 悪ガキ、この頭は立派な銀髪、白髪なんぞではぬぁい! その昔「黒ひげの剣」という由緒正しき剣があったのじゃ……。そんなこともを知らぬ、悪ガキなんぞに、姫様を任せるわけにはいかん!」
「いやいや、オレ一人で十分、爺さんの手は借りないでいいって」
「ええ、うるさい! このハヤシサワがついて行くのじゃ!」
「オレだ!」
「ワシじゃ!」
 にらみ合う二人を見ている姫に、ゆっくりと次の声。
「姫様には素敵なナイトがおられますね。動物さんたちにもナイトが必要でしょうから、こちらは僕が引き受けましょう。その山小屋のことについても、少し調べたいことがありますので、何かわかればすぐにでも……」
 にっこりと笑いながら、ユーサンが姫の頭を撫でた。
 そして、後ろの兵士たちへも視線をやると。
「我ら一同、この身、姫様にささげよと、パンパン大佐からのご命令です!」
 ざっと兵士たちの足並みがそろった。
 それを見て姫がにっこり笑う。
「ね、一人じゃないもの」
 嬉しそうに姫の手の上にちょこちょこ移動したマイケルは、興奮したのかちその毛がょっとだけつんつんと逆立った。
 そして姫たちは地上の小屋を目指して歩き始める。

                                                         つづく                                                         
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2008年11月21日

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(7)

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(7)

                                           文:すーさんの永遠のライバル
                                           絵:A氏


 目の前に広がる不思議な光景にケッピ姫とリュウは目を見張った。
「かんぱいっクマー」
「ぷはーっクマー」
 クマたちが乾杯し合い。

 3−7.jpg
 
「やるだコン!」
「負けないだポン!」
 キツネとタヌキが頭に葉っぱを乗せて、変化対決をしている。
「もう1っぴきいけるカメ」
「小さいのを乗せるカメ」
 カメが背中にコガメを乗せあい。
「負けないだワン!」
「本気出せば早いだニャー」
「ウサギ跳びをバカにしちゃいかんウサ」
 クラウチングスタートを準備する動物たち。
 アリのマスゲーム。
 ハリネズミころがし。
 オオカミ応援団。
 競技をする動物たちと、それを周りで応援する動物たちで、その洞窟の中は非常ににぎわっていた。
「なんだ、これ?」
「うんどうかい…かなあ…」
 姫がぽつりと漏らした。
「いや、花見か…?」
 リュウが見てみろよ、とその土の壁をさす。
「あれ? お花、これ……桜だよ? どうして……」
 姫が驚くのも無理はない。なぜなら、土からはみ出て、むき出しの伸びた根っこの先に、ピンクの桜の花がきれいに咲いていたのだから。
咲いているどころではない。満開だ。
 どの根っこにも根っこが見えないぐらいびっしりと桜色の花が見事に咲いているではないか。
 その花が放つほのかな光で、その場はぼんやりと明るい。
「……はぁ、はぁ……追いつき…ました、ぞ! …姫様……お、お怪我はありませんか」
 息切れしたハヤシサワも、兵士たちも皆、目の前の光景に目を丸くする。
「おや、地上からのお客様だケル?」
 ふいに足元から小さな声がした。
 いちばん近い姫がしゃがみ込む。
「うん。みんな、動物さんたち何をしているの?」
 姫に話しかけているのは、小さなハリネズミだった。
「お花見と、春の運動会だケル。……はっ! その王冠、もしやあたなはお姫様だケルか?」
「うん、ケッピっていうの?あなたのお名前は?」
「ハリネズミのマイケルだケル」
「ハリネズミ? でも…」
 ケッピ姫がつんつんっとマイケルの針をつつく。普通ならハリネズミの針は硬いはず……なのだが。
「やわらかいよ?」
 姫がなでてもチクリとしないぐらい柔らかい。
「ほかの仲間はみんな固くてイイ針なのに、おいらだけ柔らかいだケル」
 マイケルはしゅんとして下を向いてしまった。
「でさー、マイケル、なんでわざわざ地下で運動会なんてやってんだ? 地上でやりゃーいいじゃんかよ」
 痛くないとわかって、リュウがひょいとマイケルをつまみ上げて手の上に乗せる。
「仕方ないんだケル、この山の意地悪なおじいさんが、おいらたち動物が上で騒ぐのを嫌がるだケル。だから地下で仕方なく運動会やったケル」
「意地悪なおじいさんとな?」
 ハヤシサワが鼻の上に小さなメガネを乗せ、マイケルと視線を合わせて問いかけた。

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2008年11月14日

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(6)

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(6)

                                           文:すーさんの永遠のライバル
                                           絵:A氏


 洞窟は魚の口のようにぽっかりと大きな口を開けていた。
 そして、中からは一定の間隔で空気が、出たり、入ったりしている。
「なんだか、ちょっとひんやりするね、風」
 そう言って、ケッピ姫が手に息を吹きかけた。確かに洞窟の中からふいてくる風は湿っぽく少し冷たかった。
「ほれ、これ着とけよ」
 自分のボレロを姫にひっかけて、リュウが先に進んでいく。

 みんなか3−6.bmp

「わあ、ありがとう。いいの? リュウくん寒くないの?」
「ん……まぁな。暗いから、足元気をつけろよ」
 耳のあたりをちょっとかいて、ぼそっと答えると、リュウは姫の方を見ずにどんどん進んでいく。
「わ、わ、ちょっとまってよー」
 先へ進むリュウの背中を姫は一生懸命に追いかけた。
 暗い洞窟の中、リュウが魔法で出した薄ぼんやりとした光の球の明かりだけをたよりに進んでいく。
 中は広く、空洞になっている。少し進むと上部にいくつか穴が開いていて、そこから天井の光が帯になり降り注いでいた。
「わあ、見て、リュウくん。ひだまりだあ…」
 光の帯の下に立って姫がリュウを振り返る。
 光に反射する金髪と春の空のような澄んだ青い目が、くりくりとリュウを見つめた。
「すげー。……きれいだなー」
 ボーッと何かに見とれるように、そう感想を漏らすリュウ。
 兵士達が大勢入ってもまだ余裕のある大きな空洞。それはその広さのまま、ずっと続いていそうだった。
「ねえ、リュウくん…」
 陽だまりの下で姫がおいでおいでをする。
「な、なんだよ」
 その言葉に我に返ったリュウが、姫の方へ向かう。
「ね、なんか聞こえない?」
「何が?」
「ほら、なんか、声…」
 耳を澄ます姫が、リュウの肘を下から上に押しやり、同じように耳を澄ませとせかした。
「声?」
 二人で耳を澄ますと。
「…がんばれー」
「ひゃっほー」
「ゴール!」
 小さな声が確かに聞こえた。
「なんの声だ?」
 首をかしげるリュウの、袖がぐいと引っ張られた。
「リュウくん!こっち、こっちから聞こえるよ!」
「おいおいおい、あぶねーって!」
 声のする方に転がるように駆けて行く姫を、今度はリュウが追いかけた。


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2008年11月07日

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(5)

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(5)

                                           文:すーさんの永遠のライバル

                                

「あ、ポチ」
 ケッピ姫が生き物を指差した。
 その生き物はリュウのペットの火トカゲで名前はポチ。
 お重の隙間から、たこさんウィンナーを口にくわえ、次の瞬間しゅるるるっとバスケットから出てきたのだ。
「おのれ……。飼い主も飼い主なら、ペットもペット……。待つのじゃ! ポチ!」
 ハヤシサワはバスケットをおいてポチを追いかけていく。
 姫の目も追いかけ合う二人に注がれる。
 すると、ポチはしゅるるっと、近くの穴から地面の下にもぐった。
「よーし、そこでじっとしておれ!!」
 ずぼ!
 その穴に勢いよく頭から飛び込んだハヤシサワは、おなかのあたりでつかえて、上半身が穴の下にはまってしまい、地上に出ている足をバタバタと動かした。
「おのれー、待つのじゃポチ!」
 じたばた、じたばた。
 さかさまになった足が空中で走る。
「あははは! さかさまだよ! ハヤシー」
 ケッピ姫は指を差して大笑い。
「ぷくくっ。おもしれーから、くつひも結わいてやろうぜ」
 リュウも大喜びでハヤシサワの靴紐を結わき始めた。
 脇で兵士たちが二人の言動におろおろしている。
「おお、おおおっ! 姫様、姫様、大変でございますぞ!!」
 地下からくぐもった声がそう話しかけてくる。
「なーに? どうしたのー?」
 ハヤシサワに聞こえるように姫がそう大きな声で話しかけた。
「地下で、地下で花が咲いてございます!」
「えええええっ!」
 ハヤシサワの足のそばで顔を見合わせる二人。
「一体どこにつながってるんだろう……?」
 目を丸くした姫に、リュウが何かを見つけたようで1か所を指差して言う。
「なあ、姫! あっちになんか洞窟っぽいもんが見えるぞ、あそこから下降りれんじゃね?」
「え? どこどこ?」
「向こうだよ、行ってみようぜ!」
 姫の手を取り、リュウが走り始める。
 いつの間にか、火トカゲも戻り彼の肩の上に乗っていた。
 姫とリュウを追いかけて多くの兵士たちも洞窟へ向かう。
「だ、だ、だれか助けるのじゃー!」
 だいぶ頭に血が上って来たか、口が回らなくなってきたハヤシサワを兵士の一人が引っこ抜く。
 助け出されたハヤシサワは頭をぷるぷるとふるわせて、髪についた土を落とした。
「大丈夫でございますか、ハヤシサワ殿!」
 パシッと足を合わせて敬礼する兵士。
「おお、御苦労であった。して、姫様は…」
「リュウ殿と向こうの洞窟へと向かわれたであります!」
「なに、またリュウの奴めが……。こうしてはおれん! 姫様今参りますぞー!」
 髪をなでつけ、走り出そうとハヤシサワが足を出した瞬間。
 ドベシャ!
 靴紐が結ばれていたため、激しく転倒した。
「だ、だ、大丈夫でございますか、ハヤシサワ殿!」
 兵士が慌てて助け起こし、結わきあった靴紐をほどく。
「あたたたた……。いったい誰がこんなことを…、いや、あ奴しかおらん。くっ…このハヤシサワこんなところで、めげている訳にはいきませんぞ。皆の者!追うのじゃ!」
 足の自由が利くようになったハヤシサワは、土けむりを上げて姫たちの後を追いかけていった。
          
                                                         つづく                                                         
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2008年10月31日

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(4)

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(4)

                                           文:すーさんの永遠のライバル
                                          
「ねえねえ、リュウくん、なんだか今年のお山ヘンじゃない?」
 山の中をてくてくと歩きながらケッピ姫がリュウを見上げてそう聞いた。
 お城のみんなでお花見に来たため、ふたりの周囲に兵士達の規則正しい足音が響いている
「変って?」
「だって、ほら、木にお花咲いてないよ」
 確かに、いつもなら桜のアーチになっているはずの山道が、今は枯れ枝のままだった。
「そういやそうか……。でもまぁ、たまたま開花が遅れてるだけなんじゃねーの? 上の方ならきっと咲いてるって」
 気軽な調子でリュウが山頂を指差すが、姫は、
「そうかなぁ…」
 不安げな顔で桜の木を見上げていた。
 桜の蕾はまるで眠っているかのようにぎゅっと閉じられたままだった。
 そして、そんな姫の不安は的中する。
「一体どうなっておるのじゃ…」
 いつもならにぎわう山頂に今日は誰もいない。
 どの桜の木もつぼみが固く閉じられていて、花が咲く気配がまるでない。
「お花、ないねえ……」
 ぐるりと見渡して姫が言った。
 よく見れば鳥も、蝶も、動物も何もいない。
「なんか、周りの山は皆咲いているのに、ここの山だけまだ冬って感じだなー」
 リュウが遠くの山を見ながらそう言う。
 花一輪、若葉一枚ないぽっこり山は、リュウが言う通り、まだ冬のままに見えた。
 ぐぅぅぅぅ。
 がっかり顔の姫のおなかがなった。
「お花はないけど、お山登ったらおなかすいちゃった」
 そう言って、姫がはにかんだ。
「ハヤシー、お弁当食べよう―」
「そうでございますな。桜はないですが、ハイキングに来たと思って、召し上がりますかな」
「うん、そうしよう!」
 姫がにこにことハヤシの持っているバスケットの中身を覗き込む。
「わあ、お重なの?」
 姫の言葉に、満足げに頷きハヤシサワがお重のふたを少し開けて見せた。
 と、
 しゅるしゅるっ…!
 重箱の中に何か小さな生き物が入り込んだ。

                                                         つづく                                                         
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2008年10月24日

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(3)

みんななかよし 第三話 『心に花を咲かせましょう』(3)

                                           文:すーさんの永遠のライバル
                                           絵:A氏


 怒鳴り声に驚いて、びっくぅっとリュウの肩が上がる。
 食べかけのコロッケをくわえたまま、ゆっくりと振り返ると、そこには鬼の形相のハヤシサワが……。
「悪がき! 口に入れたものを出さんか!」
「あふ、あふ…」
 そういわれても、水気のないコロッケはなかなか飲み込めず、さりとて一度口に入れたものを出すなんてこともったいなくて、リュウはもぐもぐと口を動かすしかできなかった。
「あああ! こんなにつまみ食いしよって! 出すのじゃ! 今すぐ出すのじゃー!」
 目を白黒させるリュウをハヤシサワはぶんぶんと振り回した。
 リュウはなんとかコロッケを飲み込み、
「なんだよ、いいじゃねーか。みんなの弁当だろ?」
 ふてくされながら文句を言った。
「なんじゃと! 謝りもせんで! これは、姫様のお弁当じゃ。姫様が一口召し上がってから、ワシらが食べるべきなのじゃ!」
 ハヤシサワは頬をぷくっと膨らませて怒る。
 リュウが食べた分だけ、きれいに詰められたお重に少し空きができてしまったのだから無理もない。
「じゃあ、あれだ。オレ、お毒見。何か混入してちゃいけねーからさ」
 リュウは悪びれず、おどけた態度で言う。
「この弁当は、このハヤシサワが丹精こめて作ったものじゃ。誰も何も入れられはせん! 適当な嘘つきよって!」
 迫るハヤシサワに、ニヤニヤしながらリュウが言う。
「いや、ほら、うまそうだったからさ。…いいじゃねーか、どっちみち 山登っているうちに弁当がよって、誰も穴開いているだなんて、気がつきゃしねーって」
「なんじゃと!」
「………それにしても」
 リュウは顔を真っ赤にして怒るハヤシサワを、上から下までしげしげと眺めて、
「爺さん、ナイトキャップなんてかぶってたんだな」
 その言葉を聞いてハヤシサワははっと、頭の帽子に手をやった。

 20.jpg

「それに、そのパジャマの柄…」
 ハヤシサワが着ているのは白地に大きな水色の水玉模様のついた可愛らしいパジャマだ。
「うくく、くくく…普段の爺さんとは、うってかわって、なんつーか、かわいいって言うか…その水玉、どこで売ってんだよ」
 リュウの言葉に、ハヤシサワの顔には怒りでない恥ずかしさの赤がプラスされる。
「かわいい!? ふざけたことを言うでない! リュウ! …もう、早くどこかに行ってしまえ!」
 その背中を、ぐいとハヤシサワが押した。
「へいへい。いきますよー。ごっそさーん」
 そう、キッチンの窓によじのぼって、そこから手をふり、リュウが窓の外に消えていく。
 残ったハヤシサワは水玉パジャマのポケットから懐中時計を取りだした。パカリと開けてびっくり。
「あの、悪がきとしゃべっていたせいで、もうこんな時間じゃ! 急いで着替えなくては…」
 そうして、ハヤシサワはぱたぱたと自室に戻っていった。

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