文:すーさんの永遠のライバル
絵:A氏
普段のユーサンは白い執務服を着ているが、今は胸元に銀の刺繍あしらわれた黒い服を着ている。
そしていつもは結わいている髪も、結わかれておらず、まっすぐ垂れている。
手には紅茶のカップではなくワイングラス。
それほどまでにいつもと違っていたが、その人物がユーサンとわかるのにそれほど時間はかからなかった。

「こんばんは、ユーサン様、まさかここでお会いできるとは思いませんでした」
「ユーサン殿、お会いできて光栄です。私、この町で貿易商を営んでいる……」
「ユーサン様、今宵の夜会、わたくしと踊っていだたけませんか?」
「ユーサン様…」
「ユーサン殿…」
周囲には次々に女性がやってきて、あっという間に人垣が出来、その色とりどりのドレスの向こうにユーサンは見えなくなってしまった。
「いたねえー」
「いただろう?」
二人は目を合わせてにっこり微笑んだ。
「あ! ワルツ…」
音楽隊の音が一段と華やかになり、タキシードを着た男達がそれぞれお目当ての女性たちへと声をかけ始める。
「ユーサン、誰かと踊るのかなあ……。お城の舞踏会はあんまり踊っているの見たことないけど……」
「舞踏会の時は仕事が忙しいからな……って、おい、姫、あんまり出過ぎんなよ。見つかるぞ!」
「わかってるー!」
そう言って、女性の中にいるユーサンを見ようと姫はリュウから少し離れ、あっという間に人の波にのまれてしまった。
「お、おい、姫!」
駆け出そうとしたリュウの視界を、ふわりと黒い羽扇子が覆った。
「あら〜この坊やかわいいじゃな〜い?ねぇ、おねーさんたちとちょっとお話ししなーい」
「どれどれ〜? やだ!ほんと!若いわねぇ〜」
ほろ酔い気分のお姉さん達がリュウを取り囲む。
「ねえ、君いくつなの?」
「どの伯爵の弟なの?」
大きく胸元の空いたカットドレスとスパンコール、アルコールと混ざった甘いフレグランスがリュウの鼻先をくすぐる。
「いや、あの、ボクはその………」
目のやり場に困ったリュウがしどろもどろでそう言葉を紡ぐ。
「やだー、ボクだってー。かわいい〜」
ぐりぐり、女性の手がリュウの頭をこねくり回す。
「ちょっとー、あんまりいじっちゃ、かわいそうよー」
「いいじゃな〜い。ねぇ、ボクいくつなの〜?」
ぐりぐりと頭を撫でられて、リュウはその手を振りほどけない。リュウはいつもの勢いがまったく感じられない程困惑していた。
「じゅ、じゅうろくです……」
「うっそー! 16? 16歳なのー」
「わっかーい、かわいいー!!」
「男の子だけど、肌だってつるつるだし、なんか、良く見ると顔もきれいよね―坊や」
ずい、顔が近づいてきて、リュウはその場で真っ赤になる。
「いや、ボ、ボクは用事があるんで……」
じり、と一歩下がるが、お姉さん達は離してくれそうもなかった。
つづく





