みんななかよし 第四話『ユーサンを尾行せよ!』(7) 文:すーさんの永遠のライバル
絵:A氏
そのころケッピ姫は柱時計の陰からユーサンの様子をうかがっていた。

フロアの中央には徐々に男女ペアの客人達が集まりつつある。
「ちょっと失礼します」
ユーサンはむらがる女性たちに微笑を浮かべつつ、その輪から離れ、 大きな肖像画の下に座る女性の元へと向かった。
二つ並んだ椅子の片方には女性、もう片方には男性が腰掛けていた。
ユーサンはその女性に、一言二言何か話しかけて、手を差し出す。
女性がユーサンの手をとって立ち上がると、鮮やかな薄いオレンジのドレスが大きな花のように開く。
同時に起こるため息の数々。
椅子に座ったまま男性の方は、苦い顔をしたまま幾度かひげをなでて、二人を見つめていた。
「わあ、踊るんだ。あの人、誰なんだろう……」
ケッピ姫がそう呟くと、
「なんだよ。キミ知らないの? そう言えば、初めてみる顔だね……」
後ろから声をかけられた。
話しかけてきたのは、姫と同じぐらいの少年だった。
栗毛はつんつん立ち、首の蝶ネクタイもまだ小さい。手にはアイスクリームのグラスを持っている。
「あの、オレンジ色のドレスの人はね、ここの家のマダムさ」
少年はアイスクリームをぱくつきながらそう言う。
「まだむ?」
「そう、この夜会の主催者ってこと。んで、一緒に踊ってるのは、お城のユーサンっていうやつさ。夜会でユーサンを知らない人はいないよ、うちのねーちゃん達ももうメロメロさ」
他人の口からユーサンの名前を聞くのが新鮮で、姫はにまっと笑った。
「なんだよ、何で笑ったんだよ」
「ううん。ユーサンって有名人なんだなあと思って」
「あったりまえだろー。知ってる? マダム達はユーサンと踊りたいから夜会に呼ぶんだぜ?」
「そうなの?」
「そうだよ。ユーサンは、招待したマダムとしか踊らないんだ」
「へぇぇぇ……よく知ってるね」
「だから言ったろ? うちのねーちゃん達がユーサンの追っかけなんだって。だから、あちこちに僕も連れまわされてるってわけ。そうだ、君もアイス食べる?」
「うん!」
姫が頷くと、少年は給仕の人から、アイスクリームをもらってきて、姫に手渡した。
アイスを食べている間にも音楽は流れ、ユーサンとそのマダムは滑らかなステップを踏んでいる。
アイスクリームは少し苦くて不思議な味がした。
バナナとバニラの味なのに、あと一つ食べたことない味がする。
それでもおいしくて、その少年としばらく話をしながら食べ進めると、そのうちなんだかユーサンの足取りと女性のドレスのすそが、マーブル模様に混ざって見えた。
頬がぽっぽと温かく、ワルツのリズムが近くで聞こえたり、遠くで聞こえたりする。
こつん……。
頭がついてから、ようやく姫は自分が柱時計に寄りかかっていることに気づいた。
ボーン、ボーン、ボーン、柱時計がそう時をつける。
「今、何時なのかなぁ…」
数えたけれど、8回以上はカウントできずに……姫の瞳は閉じていった。
つづく

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posted by (有)すークリエーション at 23:31| 東京

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